There is no cloud (メモ)
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There is no cloud, it’s just someone else’s computer.
今日、雲はインターネットの中心をなすメタファーだ。それにもかかわらず、可想的で精霊的なもの、把握するのがほぼ不可能なものとしてのオーラを保っている、強大な力とエネルギーをもつグローバルなシステムである。私たちはクラウドに接続する。クラウドのなかで働く。そこにものを蓄えては取り出す。それを通して考える。それに対する支払いをし、それが壊れないと存在に気づかない。それが何か、どう働いているのかを本当に理解することなく、ずっと経験しているものだ。何が何にゆだねられているのか、ごくあいまいな考えしかもたなくても頼れるように自分自身を訓練しているようなものだ。
故障時のことは別にして、このクラウドに対する最初の批判は、それがとても悪いメタファーだということだ。クラウドには重さがある。形が定まっている。そして探すべき場所を知っていれば、目にも見える。クラウドは、水蒸気と電波で作られた、すべてのことがうまくいく、どこか魔法めいた遠くの場所ではない。それは電線、光ファイバー、衛星、海底ケーブル、コンピュータがぎっしり詰まった巨大な倉庫から成る物理的なインフラストラクチャーであり、莫大な量の水とエネルギーを消費し、国家および法的領有権のもとにある。クラウドは、猛烈に意欲を燃やしている新種の産業なのだ。クラウドには影がないだけではなく、足跡を残す。かつて市民生活に必要だった建物の多くが、クラウドに吸収されていった。それはすなわち、買い物をし、金を預け、社交をし、本を借り、投票をする場所たちだ。これらがあいまいとなって目立たなくなることで、批判や調査や提示や管理から免れやすくなった。
もう一つの批判は、この理解のなさが意図的なものだということだ。国の安全から企業秘密から多種多様な不正行為まで、クラウドの内部に何があるかを隠すのにはもっともな理由がある。失われるのは主体性と所有権だ。ほとんどのメール、写真、近況アップデート、ビジネス文書、図書館と投票のデータ、健康診断記録、信用格づけ、いいね!、記憶、経験、個人的嗜好や語られない欲望が、クラウドに、つまり他者のインフラに取り込まれている。グーグルやフェイスブックが、データセンターをアイルランド(低い税率)や北欧(安価なエネルギーと冷却費)に建てたがるのには理由がある。いわゆる植民地支配後のグローバルな帝国が、ディエゴガルシアやキプロスといった紛争地域を手放さないのには、理由がある。クラウドをこれらの地域に設置すれば、そのあいまいな地位を利用できるからだ。自らを権力と支配力の地理学の上に形作り、それを強化することにクラウドは役立つ。クラウドは力関係であり、ほとんどの人は優位に置かれてはいない。
James Bridle; 久保田晃弘; 栗原百代. ニュー・ダーク・エイジ (Japanese Edition) . NTT出版株式会社. Kindle Edition.